キーワードからみた労働法

キーワードからみた労働法

コンセプトは「俗説を切る」。最低賃金の引上げや均等待遇の保障は労働者のためにならないなど、一見常識はずれの主張から読者の思考の多角化・柔軟化を試みる。

  • 著者
  • 大内伸哉
  • 出版社
  • 日本法令
  • 出版年月
  • 2009年04月
  • ISBN
  • 9784539721063

『キーワードからみた労働法』は、「ビジネスガイド」誌で同名で連載中のもののなかから、これまでに発表したものを単行本化したものである (単行本化にあたって、かなりの加筆や修正を行っている)。本書は、私が日本法令社からこれまで出版した『就業規則からみた労働法』(単著)、 『通達・様式からみた労働法』 (梶川敦子氏と共著) に続く『○○からみた労働法』シリーズの第3弾である。

本書のコンセプトは、簡潔に言うと、「俗説を切る」である。私は、「ビジネスガイド」誌での連載を通して、特に「俗説を疑う」ということにこだわってきた。本書には、読者諸兄が日頃よく耳にする主張とはかなり違う主張が随所にもりこまれているはずである。たとえば、最低賃金の引上げや均等待遇の保障は労働者のためにならない、偽装請負は企業だけが悪いのではない、名ばかり管理職が出てくるのには法律にも問題がある、ワーク・ライフ・バランスを政府が推進するのは憲法の理念に反する、メンタルケアの強化は労働者にとって危険である…といった一見常識はずれに思えるような主張が本書には出てくる。

読者のなかには、私の主張について、納得できなかったり、首をかしげたりする人もいるであろう。それは私にとっては想定内のことである。むしろ、そのように批判的に読んでもらったほうがよいと考えている。ただ、私の書いていることに、少しでも理があると思えば、それをきっかけにじっくり考えてもらえればよいのである。

新聞やマスメディアで流されている情報には、実は情報提供者の価値観や評価がすでに投影されていることが多い。これを鵜呑みにしていると、知らぬうちにマインドコントロールされてしまう危険がある。違った考え方もあるということを知ることによって、はじめて自分なりの冷静な判断ができるようになるのである。本書が、読者の思考の多角化・柔軟化に少しでも役に立つことができれば、それだけで本書の狙いは達成されたことになる。

大学院法学研究科教授・大内伸哉


目次

  • 第1章 「格差社会」にどう立ち向かうべきか
    • 最低賃金
    • 均衡待遇
    • 雇止め
    • 偽装請負
  • 第2章 社会的弱者をいかにして救うべきか
    • 間接差別
    • 高年齢者雇用確保措置
    • 合理的配慮
    • 外国人研修
  • 第3章 ホワイトカラーの働きすぎにどう対処すべきか
    • ワーク・ライフ・バランス
    • 管理監督者
    • サービス残業
    • ホワイトカラー・エグゼンプション
    • メンタルヘルス
  • 第4章 労働法の新潮流をつかもう
    • 労働契約法
    • 解雇の金銭解決
    • 成果主義
    • キャリア権