ベトナム反戦、大学紛争、新左翼・・・世界中で若者が改革を求めて決起した「68年」に関する関心が近年高まっている。関連する書籍が次々と出され、売れているようだ。しかもその書き手の多くが当時を知らない世代であり (かくいう私もその1人)、読者も若い世代が多いという。時代はもはや「蟹工船」ではなく、「68年」なのかもしれない。
本書は、そのドイツの「68年」を扱ったものであり、「68年」を担った世代が、その後新左翼や「新しい社会運動」を経て、緑の党という新たな政治勢力に結集し、これを発展させていく過程を、史料や関係者へのインタビューを基に分析している。そうした意味では、ドイツの「68年」史でもあり、緑の党の通史でもある。また日本の「68年」、とりわけ全共闘運動にも触れ、ドイツの「68年」との比較から、なぜドイツでは緑の党のような68年世代の党が実現したのに対し、日本ではそれが出来なかったのかも考察している。
基本的に一般の読者を想定して書かれているため、注や文献の出典表示を出来るだけ少なくし、平易な文章を心がけるなど、読みやすく工夫されている。一方巻末には自身が実施した関係者へのインタビューの抜粋や、関連文献のガイドも掲載しており、専門の研究者にも満足してもらえるよう配慮してある。「68年」やエコロジーに関心のある人だけでなく、日本の68年世代である全共闘世代にも、ぜひ本書を手にとってほしい。
大学教育推進機構講師・西田慎