武力行使の政治学

武力行使の政治学

単独と多角をめぐる国際政治とアメリカ国内政治

第二次世界大戦後に焦点を絞り、アメリカが複数の可能性の中から、ある特定の軍事行動の形態を選択する理由を、理論と実証の双方から検討する。

  • 著者
  • 多湖淳
  • 出版社
  • 千倉書房
  • 出版年月
  • 2010年01月
  • ISBN
  • 9784805109373

超大国アメリカは、その圧倒的な軍事力を背景に世界各地で様々な軍事行動を展開している。しかし、一口にアメリカの軍事行動といっても、多様なスタイル (形態) が存在する。

まず、国際機構における集団的決定を受けてから多角的に軍事行動を実施する場合がある。これに対し、アメリカが独断で軍事行動の発動を決め、いわゆる単独主義 (unilateralism) に基づき一国で実施する場合もある。また、アメリカが有志連合の編成を友好国に持ちかけ、国際機構における集団的決定を欠きながらも、多国籍軍として多角的な武力行使に訴えることもある。

アメリカは、なぜ多角軍事行動と単独軍事行動を使い分けるのであろうか。それはアメリカを取り巻く国際条件 (たとえば、アメリカの相対国力の大きさ)、または作戦の種類や規模、軍事行動の目的といった要素で決まってしまうものだろうか。それとも、アメリカの国内事情が軍事行動の形態選択を左右するのであろうか。

軍事的に「強いアメリカ」が単独行動に訴えるのをデフォルトと考えるならば、多角軍事行動が選択されるのには何らかの理由があり、それは国際条件であれ国内条件であれ、特定されなくてはならない。特に、同盟国としてアメリカの多角軍事行動に否応なく関わらざるを得ない日本は、このことに決して無関心ではいられないはずである。逆に、国連を国際社会の軸と捉え、それを無視した単独軍事行動には規範的な問題があると考えるのであれば、なぜアメリカが国連軽視につながる単独軍事行動を行うのか解明せねばなるまい。

本書は、このような問題意識に立っている。第二次世界大戦後に焦点を絞り、アメリカが複数の可能性の中から、ある特定の軍事行動の形態を選択する理由を、理論と実証 (データを用いた計量分析と歴史資料を用いた事例分析) の双方から検討する。

法学研究科准教授・多湖淳


目次

  • 第1章 軍事行動の形態をめぐる諸議論
  • 第2章 軍事行動の形態選択をめぐる仮説群
  • 第3章 計量分析
  • 第4章 事例分析1 第一次湾岸戦争
  • 第5章 事例分析2 キューバミサイル危機とドミニカ介入
  • 第6章 事例分析3 第二次湾岸戦争
  • 第7章 結論