音の万華鏡・音楽学論叢

音の万華鏡・音楽学論叢

人間と音楽とのかかわりを、民族・民俗・教育などの分野から考察した論文22編。西洋音楽、日本音楽、諸民族音楽をはじめ地球上の人類が表現している音・音楽すべてを相対的に捉える。

  • 著者
  • 藤井知昭, 岩井正浩
  • 出版社
  • 岩田書院
  • 出版年月
  • 2010年07月
  • ISBN
  • 9784872946291

「音の万華鏡」とは音・音楽のすべての歴史的・ジャンル的に適応した音・音楽を意味しています。西洋音楽は勿論のこと、日本、諸民族音楽をはじめ地球上の人類が表現している音・音楽すべてを相対的に捉えています。

この本は藤井知昭・岩井正浩編として、私の定年退官記念論文集の性格を有しています。友人である日本の先駆的研究者、私の指導した学位(博士)取得者を軸に21編を収めました。ジャンルとしては西洋音楽、日本伝統音楽、日本民俗音楽、諸民族音楽、音楽療法、感性メディア、芸術文化行政、そして音楽教育など多種多様です。私自身も巻頭論文として「四国3収容所におけるドイツ軍俘虜の音楽活動」を執筆しています。20世紀初頭の第一次世界大戦で俘虜となったドイツ軍兵士が中国・青島から日本各地に送られてきましたが、そのなかで四国3収容所(徳島、松山、丸亀)における収容所での音楽活動を論じたものです。ドイツ軍俘虜達は、彼らの祖国であるドイツ音楽をさまざまなアンサンブルやソロ活動で表現してきました。この3収容所が統合された徳島県鳴門市の収容所で演奏された男ばかりによるベートーベン作曲「交響曲第九」はその結晶です。その活動は日本における洋楽移入のもう一つのベクトルでもありました。

神戸大学名誉教授・発達科学部非常勤講師 岩井正浩


目次

  • 四国3収容所におけるドイツ軍俘虜の音楽活動
  • 民俗芸能の流布と変容 : 田楽の伝承をめぐって
  • 小浜島の《いらんぞーさ》の伝承をめぐって
  • 福山市蔵王のはね踊り
  • 雅楽における「復元」の理念
  • 18世紀上方の三味線音楽界における宮古路系浄瑠璃
  • 小唄の芸術化への過程 : 昭和30年代の小唄ブームにおける爪弾きと撥弾きをめぐる論争を例として
  • 楽器編成から見た神楽の分類とその分布
  • 能の復曲をめぐる一試論 : 《菅丞相》を事例に
  • 北の太鼓のリズム
  • 中国映画《さらば、わが愛》から会得する中国音楽に関する知見
  • 音楽的身体を考える : マレーシアの芸能にみられる身体の構築から
  • 音楽と脳科学 : 音楽療法への寄与
  • 「創造」へといざなう竹の「地力」 : 現代日本における竹の音楽文化を視点として
  • 異なる感性メディア表現の相互関連に関する研究 : 感情イメージの重回帰モデル
  • 明治10年S.M.タゴールが日本に寄贈したインド楽器と音楽書
  • 戦後京都市の芸術文化行政史
  • 子どもの創るうたvs.子どものために作られた歌
  • 養育者と子どもの間に交わされる音楽的なことば
  • 音楽と国境
  • 『尋常小学唱歌』の評価とその指導法 : 田村虎蔵と福井直秋の《日の丸の旗》教育方法比較
  • 台湾の小学校音楽教育における1962年改訂国民小学音楽科課程標準の意味