近年の言語研究では、コーパスなどの大規模データベースを利用することが増え、それにともない、言語研究者が計量データを扱う機会も多くなってきました。しかしながら、コーパスから得られた計量データをどう扱うかについては、従来、はっきりした指針がなかったのが実情です。本書は、統計を初めて学ぶ言語研究者を主たる対象とし、記述統計・検定・相関といった基礎から、判別分析・クラスター分析・因子分析・主成分分析・コレスポンデンス分析などの多変量解析手法にいたるまで、統計的データ処理手法の数理的概念と言語研究への応用可能性について詳しく解説したものです。日本語学や英語学に関わる豊富な研究実例を通して、統計を実践的・体験的に理解しようとする言語研究者に最適の書物と言えます。本書の付属CD-ROMには、筆者の研究室で構築中の英語学習者コーパスのデータや、統計分析のためのソフトウェア (Windows専用) が同梱されており、読者が言語データの統計処理を自身で体験できるようになっています。言語学や言語教育専攻の学部生・院生・研究者だけでなく、言語に興味を持つ幅広い読者にお読みいただければと願っています。本書は、統計数理研究所の前田忠彦氏、国立国語研究所の山崎誠氏との共編著です。
国際コミュニケーションセンター/国際文化学研究科准教授・石川慎一郎