美的思考の系譜

美的思考の系譜

ドイツ近代における美的思考の政治性

「美」の観念は、近代ドイツ語圏においては政治的な側面を持つ。思想家ヴァルター・ベンヤミンの思想を中心に、その美的思考の変容と現代的な意味を探求する。

  • 著者
  • 水田恭平
  • 出版社
  • 御茶の水書房
  • 出版年月
  • 2011年06月
  • ISBN
  • 9784275009364

「美的なもの」という観念は、西欧近代に形成された言説の代表的なものです。しかしそれは必ずしも芸術だけに関わるものではありません。近代のドイツ語圏においては、様々な変容を辿りつつも極めて重要な役割を演じ続け、「ドイツ」という社会の構成のありように決定的な意味を与え続けてきた、極めて政治的な観念です。ヴァルター・ベンヤミンという20世紀の思想家の思想を中心に、そういう美的思考の変容とその現代的な意味を探求するというのが、本書の主題です。

国際文化学研究科教授・水田恭平


目次

  • 第1部 「ドイツって一体どこにあるの?」—美的思考の誕生
    • 美的思考の誕生
    • 分裂する美的思考
    • 幻想の国民
  • 第2部 「美的現象としてだけ、生存と世界は永遠に是認されている」—美的思考の制度化とその批判のかたち
    • ゴシックの政治学
    • 海と襞・境界と地平
    • 美的思考批判のかたち—ニーチェからベンヤミン、アレントへ
  • 第3部 「希望なき人びとのためにのみ、希望はわたしたちに与えられている」—危機のなかの美的思考
    • 危機の言説・美の言説—ヴァルター・ベンヤミンの方法
    • 暗い部屋をさまようファントム
    • アウラの系譜学—「アウラの凋落」について