国学史再考

国学史再考

のぞきからくり本居宣長

国学創始以来三百年におよぶ歴史を、本居宣長というレンズを通して再考。国学の歴史をたどることによって、国学の本質を明らかにする。

  • 著者
  • 田中康二
  • 出版社
  • 新典社
  • 出版年月
  • 2012年01月
  • ISBN
  • 9784787967978

国学は現代日本におけるあらゆる人文系学問のルーツである。だが、国学の歴史 (受容史) はいまだ茫漠としてつかみどころのないものである。近代以降には四大人観 (荷田春満・賀茂真淵・本居宣長・平田篤胤) が定説となるが、国文学研究という立場から見ると、四人の結びつきは必ずしも万全ではない。そこには木に竹を接いだような違和感があり、再考の余地がある。そこで、本書では本居宣長というレンズを通して、国学史を見渡してみたい。一七〇一年に始まり二〇〇一年に終わる三百年をたどるにあたって、数十年間隔で起こったいくつかの出来事を取り上げる。宣長の生前においては宣長の目を通して、没後においては宣長の受容を通して見ていくことにする。そもそも国学は、「歌学び」(歌学) と「道の学び」(古道学) という相異なる二つの顔を持つ双面神 (ヤヌス) なのである。それゆえ、時代によって違った顔を見せた。治世においては歌学が盛んに取り上げられ、乱世においては古道学がもてはやされた。国学発祥から三百年。その歴史をたどることによって、国学の本質を明らかにする試みである。

表紙の装幀は、鈴屋遺蹟保存会による宣長旧宅の画像に宣長の肖像画をあしらったデザインで、宣長の目を通して国学史を組み替えるという本書の意図を反映している。

人文学研究科准教授・田中康二


目次

  • はじめに—双面神としての「国学」
  • 失われた国学史を求めて—四大人観から遠く離れて
  • 国学紀元前—「古今伝授」的祖述(中世〜近世前期)
  • 国学創世紀—契沖法師の登場(一七〇一年)
  • 『国歌八論』の衝撃とその波紋—賀茂真淵の登場(一七四二年)
  • 「松坂の一夜」伝説—加茂真淵と本居宣長(一七六三年)
  • 彼自身による本居宣長—自叙伝・自画像・自讃歌(一七九〇年)
  • 遅れてきた門弟—平田篤胤の登場(一八〇五年)
  • 国学地図の変容—平田篤胤の上京(一八二三年)
  • 幕末期の国学—『直毘霊』の流行(一八五三年)
  • 維新期の国学—本居豊穎と明治国学(一八六八年)
  • 日露戦争期の国学—近代宣長受容の魁(一九〇四年)
  • 戦間期の国学—国民的常識としての「松坂の一夜」(一九二三年)
  • 太平洋戦争期の国学—敷島歌・日本精神・武士道(一九四一年)
  • 戦後の国学—『本居宣長全集』の刊行と本居宣長記念館の開館
  • 二十一世紀の国学—宣長没後二百年・契沖没後三百年(二〇〇一年)