今度こそわかる場の理論

今度こそわかる場の理論

「量子場の理論」に慣れ親しむための入門書。予備知識を最小限度に抑えて、ゼロから学んでいく。

  • 著者
  • 西野友年
  • 出版社
  • 講談社
  • 出版年月
  • 2012年03月
  • ISBN
  • 9784061532823

人々がどういう理由で物理学に興味を抱き、どうして「場の理論」を学ぼうと志すのか、その経緯は専門家にもよくわからない部分がある。教員でもある(?)著者から見て、ひとつ明らかなことは「場の理論ほど誤解を招き易い学問はない」ということだ。古典場の理論は二百年余、量子場の理論は形成され始めてから百年足らず、実のところ、どうやって教えたら「場というもの」が初学者の頭に入り易いのか、まだまだ試行錯誤が続いているのである。

この本では、主に量子場の理論を扱う。ふつうに物理学を習い進めると、まずは量子力学を学び、その後で量子場を学習する。この順番を「厳守」すると、量子力学でつまずいた人は、量子場に触れる機会を失う。ああ、もったいない。そこで、量子力学も何も知らない読者層を想定して、いきなり量子場の理論から学習を始めるというスタイルで、この入門書をまとめてみた。著者は密かに思っているのだけれども、遠い将来、物理学の教程はこのように「量子場が先、量子力学が後」になるであろう、たぶん。その、未来の雰囲気をお届けできれば幸いである。

なお、私の書いた書物を読んで「西野先生は面白そうな人だ」と思い込んで講義を受けに来ると、大抵は幻滅するのだそうな。書物には好き勝手なことを書き込めるという自由度がある。本という媒体が存在することは、実に良いことだと思う。

理学研究科・准教授 西野友年


目次

  • 第0章 場は変化の舞台
  • 第1章 空間を格子に切って考える
  • 第2章 生成・消滅演算子への第1歩
  • 第3章 ブラの導入
  • 第4章 状態の時間変化
  • 第5章 飛び移る粒子
  • 第6章 境界条件と直交系
  • 第7章 連続な空間へ
  • 第8章 無限に広い連続空間
  • 第9章 波束の運動と古典力学
  • 第10章 同じ種類の多粒子系―ボーズとフェルミ
  • 第11章 波動関数の対称性
  • 第12章 フェルミ・ディラック縮退
  • 第13章 ボーズ粒子の集まり
  • 第14章 コヒーレント状態と調和ポテンシャル
  • 第15章 クーロン相互作用
  • 第16章 場の方程式