劣化ウラン弾

劣化ウラン弾

軍事利用される放射性廃棄物

イラク戦争から10年、イラクでは、子どもたちの健康被害の実態が次第に明らかになっている。放射性廃棄物の「再利用」兵器を、いま、改めて問い直す。

  • 著者
  • 嘉指信雄, 振津かつみ, 佐藤真紀, 小出裕章, 豊田直巳
  • 出版社
  • 岩波書店
  • 出版年月
  • 2013年08月
  • ISBN
  • 9784002708683

劣化ウラン兵器問題は、いわゆる「非人道的兵器」の問題であるだけでなく、環境問題でもあり、人権問題でもあるが、現在の国際社会の中において、その深刻さと緊急性が隠されてしまっている大きな問題の一つであろう。しかし、イラク戦争から10年、イラクでは、子どもたちの健康被害の実態が次第に明らかになっている。また、コソヴォ紛争の帰還兵の健康状態にも、きわめて深刻な問題が浮上している。

福島原発事故以降、日本は、この上なく困難な状況に直面している。しかし、だからこそ私たちは、「核の平和利用」から生み出される放射性廃棄物の軍事利用である劣化ウラン弾を、核サイクルが生み出す問題の一環として捉え直す必要がある。そして、放射性廃棄物を大量に環境中に撒き散らし続ける愚行と、その結果、軍人・市民の区別なく、多くの人々に、とりわけ子どもたちに取り返しのつかない悲惨をもたらす蛮行を、常識に真っ向から反する愚行・蛮行として訴えて行かなければならないと思う。対人地雷禁止条約のような国際的な枠組みによって廃絶するため、その非人道性を改めて問う。

人文学研究科・教授 嘉指信雄


目次

  • 残される爪痕
  • 1章 劣化ウラン弾って何?
  • 2章 環境と健康への危険性 —予防原則に基づき禁止を
  • 3章 劣化ウラン問題を常識で考える
  • 4章 イラクは、今 —開戦から一〇年を経て
  • 5章 廃絶に向けて —現状と展望