和食はなぜ美味しい

和食はなぜ美味しい

日本列島の贈りもの

地震や火山噴火などの試練を日本人に与えてきた日本列島は、同時に、「和食」という恩恵も与えてきた。地球史を背景に、和食を美味しくいただける秘密を語る。

  • 著者
  • 巽好幸
  • 出版社
  • 岩波書店
  • 出版年月
  • 2014年11月
  • ISBN
  • 9784000062268

1月は、透き通った出汁の光るおでん、2月は寒鰤(ぶり)を刺身やしゃぶしゃぶで。3月はボタンエビ、4月は筍と桜鯛、5月は鮪、6月は穴子と鰻、7月には鱧(はも)を、どう調理しましょう。大阪生まれのマグマ学者(著者)と東京出身の姪と一緒に、一風変わったグルメ散歩はいかがですか。8月のぐじと鯖、9月の蕎麦と鮑(あわび)、10月の松茸と栗を、どう食べるかはお楽しみ。11月には芋焼酎とワインを飲み比べ、締めくくりの12月は河豚(ふぐ)。12カ月かけて、主に関西で和食を食べ歩きます。

よくあるグルメ旅と一線を画すのが蘊蓄の深さ。マグマやそれが冷え固まった石のつぶやきに耳を傾け、地球がどのようにして今の姿になったのか、日本列島はなぜ火山や地震が多いのかなどを調べるマグマ学者ならでは。和食を美味しくいただける秘密が、文系女子の姪にもわかるように披瀝されます。

わたしたち日本人は、地震や火山噴火などの試練を日本列島から与えられてきました。これからも与えられ続ける運命にあります。しかし同時に数えきれないほどの恩恵も授かっており、その一つが「和食」であることを、地球史を背景に語ります。四季折々の日本の料理や酒を嗜むときに、それらを育む日本列島の地勢や自然の成り立ちを知っておくことは、味わいを豊かにします。

「食べものって、その背景にある自然の営みを知ると、ずっと深く味わえるのね!」姪御さんも得心したようです。彼女の素朴な疑問に刺激を受けながら、ときにユーモラスなたとえ話も飛び出し軽快なテンポで話が展開します。また、随所に施された飯箸薫さんのイラストが、イマジネーションを広げるのを大いに助けます。

2013年、和食がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。そんな今こそ、旬の食材と日本列島を食べつくすようなグルメ散歩をご一緒にどうぞ!

(岩波書店サイト:「和食はなぜ美味しい—日本列島の贈りもの」編集部からのメッセージより許可を得て転載)

理学研究科・教授 巽 好幸


目次

  • 一月 おでん —出汁は山紫水明の恵み
  • 二月 寒鰤 —日本海誕生のヒミツ
  • 三月 ボタンエビ —大きくなる日本列島
  • 四月 筍と桜鯛 —瀬戸内海のなりたち
  • 五月 こしび —盛り上がる紀伊半島
  • 六月 穴子と鰻 —海底火山でのランデヴー
  • 七月 鱧と昆布 —地球大変動と生き物たち
  • 八月 ぐじと鯖 —沈み続ける若狭湾
  • 九月 蕎麦と鮑 —火山の恵み
  • 一〇月 松茸と栗 —列島の背骨、花崗岩
  • 一一月 芋焼酎とワイン —巨大カルデラとサンゴ礁
  • 一二月 河豚 —九州島が分裂する!?