大坂堂島米市場

大坂堂島米市場

江戸幕府vs市場経済

世界初の先物取引市場とうたわれる江戸時代、大坂堂島の米市場。米を証券化した「米切手」の先物取引。しばしば暴走を繰り返すマーケットに江戸幕府はいかに対処したのか?

  • 著者
  • 高槻泰郎
  • 出版社
  • 講談社
  • 出版年月
  • 2018年07月
  • ISBN
  • 9784065124987

諸大名は年貢米を大坂の蔵屋敷に廻送し、これを堂島などの米市場で換金して、藩財政にあてた。

日本史の教科書にさらっと書かれているこの一文、多くの人がほおづえをつきながら聞いていたであろう、あるいは全く聞き逃していたであろうこの一文に、実はものすごく沢山のドラマが含まれていることを示したのが、拙著『大坂堂島米市場』である。

諸大名は年貢米の一俵一俵に農民の名前を書かせるぐらい品質管理を徹底し、それを大坂の蔵屋敷に運んだ。大名は、実際に運んだ米の量以上に証券を発行して資金調達を行い、藩財政にあてた。その証券を買い受けた商人達は、価格変動リスクに対処するためにデリバティブまで行うようになり、さらにそれらの価格は、手旗信号や鳩によって大坂から全国各地へと速やかに送信されていた。

教科書にこのように書いて欲しいのだが、それはかなわないので、拙著に思いを託してみた。お楽しみ頂ければ幸いである。

経済経営研究所 准教授 髙槻 泰郎


目次

  • 第1章 中央市場・大坂の誕生
  • 第2章 大坂米市の誕生
  • 第3章 堂島米市場の成立
  • 第4章 米切手の発行
  • 第5章 堂島米市場における取引
  • 第6章 大名の米穀検査
  • 第7章 宝暦11(一七六一)年の空米切手停止令
  • 第8章 空米切手問題に挑んだ江戸幕府
  • 第9章 米価低落問題に挑んだ江戸幕府
  • 第10章 江戸時代の通信革命