真実を語れ、そのまったき複雑性において

真実を語れ、そのまったき複雑性において

スチュアート・ホールの思考

カルチュラル・スタディーズの理論家、スチュアート・ホール。“わかりやすさ”が大手を振るう時代に抗う、カルチュラル・スタディーズとは——。

  • 著者
  • 小笠原博毅
  • 出版社
  • 新泉社
  • 出版年月
  • 2019年06月
  • ISBN
  • 9784787719102

「言葉があった。そして、言葉遣いにとことんこだわった。それが記号と言われようと言説と言われようと、またイデオロギーと言われようと、そこには言葉への強い批判的感受性から生まれる、スチュアート・ホールにしかできない政治への介入の仕方があったのである」

カルチュラル・スタディーズの理論家、スチュアート・ホール。ジャマイカで生まれ、イギリスに渡ってメディアや現代文化の批判的研究に貢献し、反人種差別をめぐる社会運動や黒人アーティストたちの表現活動にも影響を与えた。民衆(ポピュラー)の具体的な複雑さについて考えることを厭わず、理解し、それを語ること。ホールのもとで学んだ著者が分断の時代に問う、「ポピュリズム」に対峙する知的技能の可能性。

新泉社 書籍紹介より


目次

  • 序章 真実を語れ、そのまったき複雑性において
  • I パブリック・インテレクチュアルの肖像
    • 第一章 ジャマイカン・ボーイの彷徨
    • 第二章 Over Hall——ジェームズ・プロクター『スチュアート・ホール』によせて
    • 第三章 いまだホールの「教え」に至らず
  • II スチュアート・ホールの理論的実践
    • 第四章 文化と文化を研究することの政治学——スチュアート・ホールの問題設定
    • 第五章 文化政治における分節化——「奪用」し「言葉を発する」こと
    • 第六章 人種化された国民、国民化された人種
    • 第七章 カルチュラル・スタディーズの終わり
  • Ⅲ カルチュラル・スタディーズの終わりとはじまり
    • 第八章 素描・カルチュラル・スタディーズの増殖について
    • 第九章 権力、イデオロギー、リアリティの理論化——批判理論の日本における不幸な歴史の書き換えに向けて
    • 第一〇章 「カップの底のお茶っ葉」——階級の言説性(discursivity)について
    • 第一一章 文化に気をつけろ!——ネオリベ社会で文化を考える五つの方法
    • 第一二章 レイシズム再考
  • 終章 そのただ中で、しかしその一部ではなく(In but not of)