大規模災害リスクと地域企業の事業継続計画

大規模災害リスクと地域企業の事業継続計画

中小企業の強靭化と地域金融機関による支援

経済産業研究所が実施した2つのアンケート調査に基づいて、地域企業の経営持続力を高め、地域経済の強靱化を実現していくための課題を分析し、政策的提言を行う。

  • 著者
  • 家森信善, 浜口伸明, 野田健太郎 編著
  • 出版社
  • 中央経済社
  • 出版年月
  • 2020年09月
  • ISBN
  • 9784502356414

大規模災害が発生すると、最も大きな被害を受けるのが中小企業です。特に事前の準備が不十分だとその被害は非常に大きくなります。そこで、政府は、中小企業の事業継続力の強化の観点から、中小企業に事業継続計画(BCP)の作成を促す取り組みを実施してきました。2019年5月には中小企業強靱化法が制定されました。注目したいのは、同法では、損害保険会社だけではなく金融機関にも中小企業のBCP策定を支援する努力が要請されている点です。

こうした問題意識を背景にして、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のもとに設置された2つの研究プロジェクト、すなわち、①「人口減少下における地域経済の安定的発展の研究」プロジェクト(プロジェクトリーダー:浜口伸明、担当メンバー:野田健太郎、家森信善)および、②「地域経済と地域連携の核としての地域金融機関の役割」プロジェクト(プロジェクトリーダー:家森信善、担当メンバー:小川 光、柳原光芳、播磨谷浩三、津布久将史、尾﨑泰文、相澤朋子、海野晋悟、浅井義裕、浜口伸明、橋本理博)は、2つのユニークなアンケート調査を実施しました。

第一に、「人口減少下における地域経済の安定的発展の研究」プロジェクトは2018年10月に「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」を実施しました。大企業を含む企業を対象にして、企業におけるBCPおよびリスクファイナンスのとらえ方、BCP導入を遅らせる企業固有の要因、情報開示の促進等の制度的取り組みの効果、地域金融機関や地域の産業支援機関との関係を含む地域要因を調査しました。

第二に、「地域経済と地域連携の核としての地域金融機関の役割」プロジェクトは2019年5月に地域金融機関の支店長に対して「自然災害に対する中小企業の備えと地域金融機関による支援についての調査」を実施しました。支援機関としての金融機関のBCP支援の取り組み状況、BCP面での支援姿勢と金融機関の事業性評価の取り組みとの関連性、さらに、近年の地域金融機関の人事評価や地域連携の状況などを調査しました。

本書では、この二つの調査の結果に基づいて、地域企業の経営持続力を高め、地域経済の強靱化を実現していくための課題を分析し、政策的提言を行っています。中小企業の経営強靱化に取り組んでおられる皆さんの参考になるものと確信しています。

香港中文大學出版社 書籍紹介より


目次

  • 第I部 中小企業の災害対応能力向上と事業継続の取り組み
    • 第1章 中小企業の災害対応と事業継続計画
  • 第II部 事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査
    • 第2章 事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査から見えてくる課題
    • 第3章 企業経営に資するBCPの効果
    • 第4章 ステークホルダーとの連携によるBCPの発展可能性
    • 第5章 企業アンケートから見た金融機関のBCP策定支援の現状と課題
  • 第III部 自然災害に対する中小企業の備えと地域金融機関による支援についての調査
    • 第6章 地域金融機関の事業評価とBCP支援
    • 第7章 調査の実施概要と回答者の特徴
    • 第8章 取引先の自然災害リスク対応への支援
    • 第9章 地域金融機関の事業評価
    • 第10章 金融機関アンケートから浮かび上がるBCP策定・改善に関する金融機関支店長の特徴
  • 第IV部 第II部, 第III部の調査結果に対するコメント
    • 第11章 BCPへの過小投資とその対策-理論的な観点からの調査結果の解釈-
    • 第12章 BCP策定支援現場から見た現状と今後の方向性-損保業界人としての経験から-
    • 第13章 地域金融機関におけるBCP策定支援の現状と課題-東日本大震災の実体験も踏まえて-
    • 第14章 金自然災害からの復旧・復興と信用金庫の役割-信用金庫業界一体となった取り組み-
    • 第15章 信用保証協会による危機時のセーフティネット支援-BCP特別保証の経験を中心に-
    • 第16章 本書のまとめと残された課題