日本の裸体芸術

日本の裸体芸術

刺青からヌードへ

日常に浸透していた風俗としての裸体から、明治以降の芸術としての裸体へ。日本人のヌード観とその表現をたどる異色の日本芸術史。

  • 著者
  • 宮下規久朗
  • 出版社
  • 筑摩書房
  • 出版年月
  • 2024年01月
  • ISBN
  • 9784480512284

日本は世界一のヌード大国である。街角や駅前にブロンズの女性ヌード彫刻があるだけでなく、週刊誌のグラビアには、以前よりだいぶ減ったとはいえアイドルやモデルのヌード写真が載る。日本人がいかにヌードを受け入れ、あるいは反発し、流行させるにいたったのか。また、日本の刺青 (入れ墨) は世界最高だとされ、外国から熱いまなざしを注がれてきた。しかし、現代では裏社会の象徴として否定的なイメージを与えられている。裸体が芸術となったヌードと、裸体の上に施された芸術である刺青とはどのような関係にあるのか。

そんな問題意識から、2008年に『刺青とヌードの美術史』(NHKブックス) という本を書いた。それから16年たち、屋外のヌード彫刻は邪魔者扱いされるようになり、刺青はますます隠される傾向にある。そこで、今回この本を文庫化するに当たって増補改訂し、最近のヌードと刺青にまつわる話題も加えてアップデートをはかった。身近なヌードについて考えるきっかけになれば幸いである。

人文学研究科・教授 宮下規久朗


目次

  • 序章 ヌード大国・日本を問い直す
  • 第1章 ヌードと裸体―二つの異なる美の基準
  • 第2章 幕末に花開く裸体芸術
  • 第3章 裸体芸術の辿った困難な道
  • 第4章 裸体への視線―自然な裸体から性的身体へ
  • 第5章 美術としての刺青
  • 終章 裸体のゆくえ
  • 解説 裸体に描くから裸体を描くへ  木下直之