自衛隊と財界人の戦後史

自衛隊と財界人の戦後史

支援ネットワークの形成とその意味

1990年代以降、自衛隊への支持が拡大したという一般的な見方に対して、その「前史」を描くことによって、自衛隊研究に新たな一面を提示するとともに、「日本人にとって自衛隊とは何か」という、戦後日本社会の重要課題を考える材料を提供する。

  • 著者
  • 中原雅人
  • 出版社
  • ミネルヴァ書房
  • 出版年月
  • 2024年04月
  • ISBN
  • 9784623096640

1960年代初頭、全国の駐屯地周辺の地域を中心に、民間の自衛隊支援団体である「防衛協会・自衛隊協力会」が設立され始めた。 自衛隊支援と防衛思想の普及を主な目的とするこの団体は、1960年代後半にはすでに全国で1,090の協会と約49~60万人の会員を擁するまでに拡大した。 本書は、1990年代以降、自衛隊への支持が拡大したという一般的な見方に対して、その「前史」を描くことによって、自衛隊研究に新たな一面を提示するとともに、「日本人にとって自衛隊とは何か」という、戦後日本社会の重要課題を考える材料を提供する。

国際協力研究科・助教 中原 雅人

1990年代以降、自衛隊への支持が拡大したという一般的な見方に対し、その「前史」を描くことで自衛隊研究に新たな一面を提示する。

[ここがポイント]

  • ◎ 戦後日本において自衛隊認識が良化してきた過程を見つめ直す。
  • ◎ 自衛隊がいかにして支援されてきたのか、松下幸之助を中心とした財界人の動きに注目して見る全く新しい視点。
  • ◎ 防衛協会、自衛隊協力会の概要を網羅的に説明。

ミネルヴァ書房 書籍紹介より

目次

  • はしがき
  • 序章 戦後日本社会における自衛隊認識
    • 1 見落とされてきた「前史」
    • 2 「防衛協会・自衛隊協力会」とは何か
    • 3 財界人の自衛隊支援活動を明らかにすることの意義
    • 4 本書で何をどこまで明らかにするか
  • 第1章 反自衛隊的風潮と自衛隊のタブー化――一九五四~一九六〇年代前半
    • 1 反自衛隊的風潮の高まり
    • 2 「吉田路線」の定着と自衛隊の「日陰者」化
    • 3 高度経済成長と自衛隊支援のタブー化
  • 第2章 三八豪雪と防衛協会・自衛隊協力会の設立――一九六三年
    • 1 三八豪雪と自衛隊認識
    • 2 池田政権による防災政策の重視
    • 3 三八豪雪災害派遣の開始と被災地における否定的な自衛隊認識
    • 4 被災地における自衛隊認識の好転
    • 5 災害派遣の終了と「凱旋」
    • 6 防衛協会・自衛隊協力会の設立
  • 第3章 松下幸之助と自衛隊支援の広がり――一九六四年
    • 1 大阪防衛協会の設立
    • 2 歴代会長と創立時の役員
    • 3 どのような企業が会員となったのか
    • 4 活動内容――自衛隊支援と防衛思想の普及
    • 5 その意味――松下幸之助による自衛隊支援ネットワークの形成
  • 第4章 自衛隊支援ネットワークの全国的形成――一九六九年
    • 1 東京都自衛隊協力会連合会の設立
    • 2 活動内容――防衛思想の普及、愛国心の高揚
    • 3 その意味――桜田武と藤原岩市による支援の拡大
    • 4 防衛協会・自衛隊協力会の全国組織化
  • 第5章 なぜ財界人は自衛隊を支援したのか
    • 1 反自衛隊的風潮の高まり
    • 2 高度経済成長下の平和ムードと日本人の意識の変化
    • 3 ベトナム戦争と自衛隊反対運動の盛り上がり
    • 4 治安の悪化と七〇年安保問題
  • 補章 沖縄返還と沖縄県自衛隊協力会の設立――一九七二年
    • 1 沖縄を取り上げる意味
    • 2 沖縄返還と自衛隊配備
    • 3 沖縄地区隊友会と沖縄地区父兄会の発足
    • 4 沖縄県自衛隊協力会の発足
    • 5 沖縄県自衛隊協力会設立の意味
  • 終章 財界人と自衛隊支援ネットワークの形成
    • 1 自衛隊支援ネットワークは如何にして形成されたのか
    • 2 支援ネットワークの形成は如何なる意味を持つのか
    • 3 残された課題――その後、自衛隊支持は如何にして拡大したのか
  • 参考文献
  • あとがき
  • 関連年表
  • 付録
  • 人名・事項索引