一般に英語の能力は、読む、書く、聞く、話すという4つの能力に分類できるといわれている。その中で、エンジニアに必要とされる「書く」能力については、技術英語という別の壁が存在する。本書は、著者の一人がミシガン大学における在外研究が契機となって集め始めた「ネイティブスピーカーによって書かれた技術英語の表現集」が基本となっている。技術英語を書く場合に必要な表現を目的に応じて分類し、使用頻度に従って配列されている。細かい文法にとらわれることなく、技術英語を書く上で日本人が悩まされることが多い前置詞、関係代名詞、形容詞、副詞などの英語らしい簡潔な使い方が理解できるように配慮されている。
米国の学会における講演、学術誌に投稿された論文は、excellent、very good、good、marginal、poorという5段階で評価されるケースがある。大学あるいは大学院まで国内で終えた一般的な日本人にとって、excellentレベルの技術英語を書くことは至難の業といえる。しかしながら、ネイティブスピーカーが使うような英語表現をうまく取り入れると、「very goodレベルの技術英語」を書くことは可能ではないだろうか?本書がネイティブスピーカーのエンジニアや研究者を納得させるレベルの技術英語を書くための一助となれば幸いである。
神戸大学名誉教授・福岡 俊道