評価のモダリティ

評価のモダリティ

現代日本語における記述的研究

話し手の心的態度を表すモダリティのうち、「評価のモダリティ」について、その意味・用法を詳細に記述するとともに、その体系を明らかにする。

  • 著者
  • 高梨信乃
  • 出版社
  • くろしお出版
  • 出版年月
  • 2010年06月
  • ISBN
  • 9784874244838

本書が取り上げるのは、たとえば、次のような形式である。

A 「あ、お米がない。買いに行かなきゃ
B 「こんな雨の中を出かけることもないんじゃない? 今夜はパンを食べてもいいし」
A 「いや、買いに行ったほうがいいよ。明日も困るから」
B 「昨日のうちに買っておけばよかったね」

本書では、これらの形式を、ある事態が実現することに対する、必要だ、必要でない、許容される、許容されないといった「評価」を表していると考える。そして、この「評価」を、モダリティ(文の述べ方についての話し手の態度を表し分ける文法カテゴリー)の一種として「評価のモダリティ」と呼ぶ。

事態には、自分の行為、他人の行為、それ以外の出来事など、さまざまなものがある。人は、自分が行おうとする行為について、それが必要かどうかを考える。また、自分の行為が他人や世間から許容されるかどうかを考える。自分の行為について満足したり、後悔したりする。また、他人に対して行為の必要性を述べたり、他人の行為に不満をもったりする。まだ起こっていない出来事についてその実現を望んだり、危ぶんだりする。 そのような心の働きを事態に対する「評価」と呼ぶならば、人は、生きている限り絶え間なく事態を「評価」し続けている存在だと言えるだろう。評価のモダリティは、言語表現において、そのように重要な意味を担うものだと言える。

本書は、評価のモダリティ形式の意味・用法を詳細に記述し、その体系を明らかにすることと、モダリティの体系における評価のモダリティの位置づけを提示することを目指すものである。

留学生センター准教授・高梨信乃


目次

  • 第1部 評価のモダリティとは
    • 第1章 先行研究の概観
    • 第2章 評価のモダリティの概観
  • 第2部 評価のモダリティの記述
    • 第3章 「-いい/いけない」型複合形式
    • 第4章 評価のモダリティの助動詞「べきだ」
    • 第5章 評価のモダリティを表すその他の形式(1)-助動詞型-
    • 第6章 評価のモダリティを表すその他の形式(2)-複合形式型-
  • 第3部 評価のモダリティをめぐる問題
    • 第7章 評価のモダリティ形式のタ形
    • 第8章 評価のモダリティと希望表現
    • 第9章 評価のモダリティと実行のモダリティ
    • 第10章 評価のモダリティの位置づけ