水環境の今と未来

水環境の今と未来

藻類と植物のできること

私たちがこれからも水環境を守り、持続利用していくために、水生植物への理解を深め、これらがどのような可能性を秘めているかを解説。

  • 著者
  • 神戸大学水圏光合成生物研究グループ
  • 出版社
  • 生物研究社
  • 出版年月
  • 2009年03月
  • ISBN
  • 9784915342530

人口の集中と都市化、農水産業による過度の利用、高度経済成長に伴う埋め立て・地形改変や水域の富栄養化などにより、日本の水辺・海辺の環境は大きく傷つけられてきた。これらの環境は、化石燃料の大量消費に伴う地球規模の環境変動による影響とも無関係ではなく、さらなる劣化が危惧される状況にある。一方、化石燃料に替わる新しいバイオマス資源として、水圏に生育する光合成生物(微細藻類や海藻など) が大きな注目を集めており、またこれらの生物の持つ機能を様々なレベルでの環境改善のために利用しようとする試みも多くなされている。太陽エネルギーの利用拡大を考えた場合、地球表面の2/3を占める海面利用拡大が不可欠なのは明らかである。また人類が数千年にわたって利用してきた陸上の植物と比べて、藻類はこれまで極めて限られた研究・開発しか行われてきておらず、今後の利用に大きな可能性を秘めている。これらの目的の実現のためには、我々の藻類に関する理解を深め、様々な技術開発を行う必要がある、その一方で新たな利用・開発が水環境に与える影響も慎重に検討する必要がある。

そこで、水圏の環境や水圏の藻類・植物に関する研究を様々な側面から行っている専門家が集まって、 近畿圏・大阪湾を中心とする陸域・海域の水環境の現況と問題点、これらの環境に生育する水生植物・藻類の特性、藻類の生物工学的な利用に向けた研究の動向や課題などに関するシンポジウムを開催した。

本書はそれぞれのテーマについて、各著者がシンポジウムで報告された内容をもとに加筆したものである。

自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター教授・川井浩史、大学院理学研究科教授・三村徹郎


著者

内海域環境教育研究センター 特命教授 川井浩史/理学研究科 教授 角野康郎/理学研究科 教授 三村徹郎/内海域環境教育研究センター 准教授 村上明男/総合科学 中西敬/環境総合テクノス 池田知司/自然科学系先端融合研究環 特命助教 仲山英樹/早稲田大学 教授 竹山春子/農業・食品産業技術総合研究機構 松本光史/東京農工大学 教授 松永是/先端バイオ工学研究センター 教授 蓮沼誠久/科学技術イノベーション研究科 教授 近藤昭彦 (掲載順)


目次

  • 1:海藻草類からみた都市沿岸域の水環境とその改善
  • 2:陸水における水生植物の多様性と保全
  • 3:水生植物の生理
  • 4:海藻を用いた海域環境再生 ―陸と海をつなぐ循環型社会の実現に向けて―
  • 5:藻類と環境
  • 6:マリンバイオによる環境浄化と資源回収
  • 7:微細藻類の工学的応用 ―海洋微細藻類の可能性―
  • 8:バイオマスからの燃料,化学品生産 ―水生バイオマス利用への期待―