Spatial Economics for Building Back Better

Spatial Economics for Building Back Better

The Japanese Experience

人口減少時代に起こった東日本大震災からの地域再生策を提言した『復興の空間経済学』に、新型コロナウイルス・パンデミックからの復興に関する論考を追補して再構成した英訳書。

  • 著者
  • 藤田昌久, 浜口伸明, 亀山嘉大
  • 出版社
  • Springer
  • 出版年月
  • 2021年10月
  • ISBN
  • 9789811649509

『よりよい復興:アジアにおける災害復興の挑戦』

本書の大部分は同じ3人の著者が2018年に出版した『復興の空間経済学−人口減少時代の地域再生』(日本経済新聞出版社) を英語に翻訳したものです。東日本大震災を人口減少時代に突入した日本が経験した初めての大規模自然災害ととらえ、被災地だけに焦点を当てるのではなく、日本の国土システム全体を人口減少下で安定的な形に移行させることを同時に考えることを提言する内容になっています。

また本書は、新型コロナウイルス・パンデミックからの復興に関する論考を追補して原著の日本語版の内容を再構成しました。大規模自然災害とパンデミックを同じ本で扱う理由は、東京一極集中への問題意識が共通しているからです。人口減少時代の日本では、貴重な多様性の源泉である地方が衰退し、災害にも脆弱になっています。こうした状況でますます東京一極集中が進むことが予想されます。東京への集中は強い集積の経済による活力を生んでいます。しかしその一方で、地価の上昇、長時間通勤、混雑など首都圏に生活する人々にとって様々な問題が顕在化しています。近年では中核機能が集中しすぎることのリスクや人材の多様性の喪失、あるいは少子化を加速化しているなど、日本全体にとっても問題があることが指摘されるようになっています。

そこに来て、昨今の新型コロナウイルス・パンデミックの経験から、過密化した大都市では感染が自己増強的になり、他地域に感染を広げる源にもなっていることがわかってきました。

この本では、放っておけば経済に内在する集積のメカニズムによりますます東京一極集中が進むのに対して、多様な地方からなる国土システム(空間構造)とはどのようなものか、そのようなシステムを自然災害に対して強靭にし、安定的に維持するにはどのような政策が必要かを検討しました。私たちの提言は、各地域の自然資源を生かすこと、地方を災害に強いサプライチェーンで世界市場に結び付けること、失われていく規模の経済を地域コミュニティの結束力で代替してゆくこと、人々がデジタルの力を利用して大都市から解放されるアクティビティ・ベースの働き方と住み方を選択すること、などです。

本書を読んでいただいて私たちの問題意識と提言を共有していただき、今後の議論に役立てば幸いです。

経済経営研究所 教授 浜口伸明


目次

  • Long-Term Transition of Population and National Land System
  • Transformation Processes of National Land Systems and Reconstruction Policy from a Spatial Economics Perspective
  • Process of Recovery from the Great East Japan Earthquake with Pictures and Data
  • Population Decline and Creative Reconstruction in Disaster-Affected Areas
  • Reconstruction Based on Natural Resources
  • Supply Chain Resiliency
  • Regeneration of Physical and Institutional Infrastructure for Local Community
  • Local Community as a Device for Regional Innovation
  • Building Back Better to Overcome the COVID-19 Pandemic and the Great East Japan Earthquake
  • Summary and Concluding Remarks