アジアの法整備と法発展

アジアの法整備と法発展

ODA資金の支援対象国における影響評価を意図した、法制度の詳細や紛争解決過程の実態等の調査・研究書。

  • 著者
  • 金子由芳
  • 出版社
  • 大学教育出版
  • 出版年月
  • 2010年04月
  • ISBN
  • 9784887309784

開発援助の世界で、「法の支配」がテーマとなっている。しかしこれを研究する「法と開発」領域は、欧米研究者による一方通行が定着してきた。筆者はこの領域に日本から参加する数少ない研究者として、アジアの支援受入国の側から、欧米法や欧米ドナーのありかたを逆に見つめていく視点を持ち込もうとしている。とくに1990年代半ば以降に日本からアジア諸国向けに実施されている「法整備支援」の細部に取材し、法学者より以上に裁判官・検事・弁護士といった実務法曹が担った、書かれた法を超えた経験知を体する支援過程に立ち入りながら、アジア社会が主体的に模索しつつある司法制度・訴訟手続・調停・仲裁制度の独自の魅力と、日本からの関与の課題に迫っている。方法的には、現地実定法の体系的分析と、フィールドワーク・現地判例研究による動態分析を意欲的に組み合わせ、アジア法研究の新たな方法的接近を図っている。

国際協力研究科教授・金子由芳


目次

  • 第1章 アジアの法発展と日本の役割
    • 本書の目的─日本の経験知とアジアの出会い
    • 本書の方法─「法と開発」研究の新たな模索
  • 第2章 事例にみる法整備現場の課題
    • 主体性と受容性─カンボジア支援からの示唆
    • 規範体系の安定と変化─ベトナム支援からの示唆
    • 実定法と慣習法の架橋─インドネシア支援からの示唆
  • 第3章 モデル法の形成過程と実像──主体性回復への課題──
    • モデル法をめぐる論点
    • 形成過程の手続的正統性
    • 実体的内容面の妥当性
    • アジア危機諸国のモデル法への対応
  • 第4章 ベトナム民事訴訟と裁判動態──規範体系の模索──
    • ベトナム民事訴訟の基礎知識
    • 当事者主義をめぐるモデル対立
    • ベトナム民事訴訟法典の性格
    • 民事訴訟のミクロの動態─裁判傍聴・裁判官面接─
    • 監督審決定判例集の事例検討
    • 示唆:日本からの司法支援の今後
  • 第5章 紛争解決制度の選択肢──生きた慣習規範の吸上げ──
    • 訴訟・調停・仲裁
    • 訴訟─日本の司法の制度経験─
    • 調停─トランスフォーマティブな紛争解決─
    • 仲裁─アジア諸国の政策選択─
    • 「逆円錐型」の紛争解決制度の理解へ向けて